序章

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「……っ」 街を見つめる青年の双眸からは、涙が溢れ頬を濡らしていく。 それを拭おうともせず、青年は立ち昇る煙が消えてしまうまで、立ち尽くしていた…。 青年が身に纏っているのは、カザフィル大国の騎士である証の深紅のマント。 それを留め具から外し、焼け跡に脱ぎ捨てる。 「未練はもうありません」 固い決意を秘めた声が、廃墟に吸い込まれる。 けれど、その声を聞く者は誰もいない。 そして青年は脱ぎ捨てたマントを振り返る事なく、廃墟を後にした。
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