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聞き取れるかどうかの小さな声。
そのおかげで、青年に注目する人はいなかった。
唯一人を除いて。
勘定を済ませた青年は、今夜の宿を探しに街を歩く。
その後ろをまるで影のように歩く人が一人。
その気配を察したのか、青年は人気のない裏路地へと向かい、足を速めた。
地理に不案内なせいか、青年の行く手を阻むように塀が聳え立つ。
〔どうやら、袋小路に追い詰められたみたいですね〕
冷静に現状を分析しながら、青年は腰に下げた剣の柄に手をかけた。
そして、ゆっくりと青年に近づく人影。
「私に何の用でしょうか?」
剣に手をかけたまま、先に口を開いたのは青年。
「裏切り者には死を。それがジェダ国王の言葉です」
そう言うなり、人影は剣を抜き青年に斬りかかる。
ギリギリのところで、剣を抜き青年はその攻撃を防いだ。
だが、激しい剣戟はここから始まる。
「流石はカザフィル大国一と唱(うた)われた、騎士だけのことはあるな」
次々に繰り出される青年の攻撃を、全て剣で払いかわす。
〔この男、何者?〕
旅人の格好をし、フードを目深に被っているせいか、男の顔は全く見えない。
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