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「なにシけてやがんだ」
不機嫌そうな声に二人が振り返ると、そこには副長である土方歳三。
常日頃から不機嫌そうな彼の、このドスのきいた声もまた彼が鬼の副長と異名を持つ由縁である。
懐手する彼の肩は大きい。
「例の辻斬りですよ」
沖田の言葉に、土方の表情が更に険しくなった。
「…あの根性無しか」
「こ、根性無し?」
「狙うのは島原帰りの酔っ払い共ばかり。殺る時はいつも後ろからだ。しかも一度に二人までしか手にかけねェ。自分の剣に自信が無いとしか思えねえよ」
ふむ、と沖田は少女のように顎に指をあてた。
(案外、島原の遊女さんだったりして)
いや、あり得ないだろう。そもそも刀を手に入れる口がない。
「それより総司ィ…おめえ俺がなんでここに来たかわかってんだろうなあ…?」
えーっと、と沖田はしばらく真剣に悩んだ後、分かった!というように手をポンと叩いた。
「あんまり座って仕事をしすぎると、足が短くなると思い悩んだ末の散歩ですね!」
「違ぇよ!」
近藤は苦笑する他ない。
「今日は何の日だ、総司」
「お昼寝日和、ですかね」
にこにこと言葉を返す沖田に土方の雷が落ちた。
「今日はおめえの一番隊が巡察当番なんだよ馬鹿野郎!」
馬鹿はないでしょう馬鹿は、と沖田が言うと煩ぇと一喝。
まあまあ、と近藤がいなすが効果は無い。
「はいはい、そんなに怖いお顔されなくたって行きますって。高くつきますからね」
「なんでだよっ」
最後まで土方の怒声をさらりと受け流しつつ、沖田は巡察の支度へと向かった。
残ったのは土方と近藤の二人。
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