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「なに見てやがる、娘」
野太い芹沢の声に息を飲む。
「…あぁ、お前」
にや、と芹沢が笑った。
「血の匂いがする」
その言葉にぞーっと全身が粟立った。
血の匂いなんか
するわけがないじゃないか。
だって、だって、
あれはもう三日も前に。
「馬ァ鹿。鼻で感じる匂いじゃねえよ」
まるで全て見透かしているようなその目に。
貫かれる。
動けない。
話せない。
「俺じゃねえ。お前の目が、血を知ってんだ」
「なに、を」
芹沢を視線からはずす。
と、すぐに隣の細身と視線がぶつかり、うつ向いた。
芹沢の足がこちらに向かってくるのが見える。
殺される。
咄嗟にそう感じてぎゅっと目を瞑った、その一瞬、微かな囁きが耳に残された。
「『鴨』は『鴉』を喰わねぇよ」
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