時雨屋

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沈黙。 それを破ったのは麟の笑い声だった。 「ぷっ…あはははは」 鱗が腹を抱えて笑い出すのを見届けてから三人も思い切り吹き出した。 「あはははっ…もう笑わせんといてぇ…くくっ…花札って、そない…そないこわい顔で…っ」 「悪ィ悪ィ!どうも俺たちは近頃花札に凝ってるんだがよお、この近辺の芸鼓はみーんな倒しちまったんだよ!」 全く悪いと思っていないだろう佐之の言葉にも、麟はまた笑った。 「この店で鱗ちゃんが強いって聞いてさ、今日来てみたの。付き合ってくれるでしょ?」 藤堂が茶目っ気たっぷりに笑って花札の山をきる。 「今のところ三人の中では左之がドベ、平助がぶち抜き。俺はどっちつかずだ。誰から相手する?」 永倉が大人っぽい目を細めると、鱗は腕まくりをして正座を組み直した。 「失礼します」 酒の乗った盆を手に禿が障子を開くと、そこには花札を囲んでぎゃいぎゃいと騒ぐ四人の姿。 危うく自分も部屋に引っ張りこまれそうになったが、客の手前なので、丁重に断って抜け出した。 障子を閉めてやっとのことでホッと溜め息。 「なんや…女将が壬生狼の幹部が来る壬生狼の幹部が来る言うから怖い人達なんかと思うとったけど…噂は信用できひんね」 誰にともなく呟くと、 禿は盆を手にまた廊下へと消えていった。
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