暗闇

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誰か、助けてよ。 ようやく、ここまで辿り着いたのに。 掴みかけた明日への切符。 あたしはまた、手放していた。 それは、握り締めた手の中に。 確かにあったはずなのに。 そっと開いた掌には、何も残っていなかった。 掴みかけた夢さえもが、まるで幻のように。 願い続けた場所に立っているのに。 あたしには、何もない。 ここは、スポットライトの真下なのに。 どうして、何も見えないの? 隔絶された暗闇の中で。 あたしは、たった一人。 行き先もわからず。 声の出し方も忘れて。 たった一人で、ここに立っている。 真っ暗闇の重さに押し潰されながら。
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