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意外と、人懐っこい性格なのだろうか。
その笑顔は、少々幼く感じる程、無邪気な物だった。
「しかし、不自然な事件でしたよねぇ…。
学園の、管理棟と時計塔が崩壊。
生徒も巻き添えになって、何人か、死亡者も出たらしいじゃないですか。
しかも、テログループは逃走。
一部では、生徒の中に〈クトゥルー共生派〉の、シンパがいたって報道も有りましたよね?」
俺は、カウンターに放り出したままの、新聞とデータディスクに視線を落としながら、曖昧に頷いて見せる。
俺の視線に気付いたのか、親父さんが、さり気なく、新聞をバックバーへと片付ける。
「ノーラは、なんて言ってた?」
俺は、アベルに向かって、再び笑いかける。
「止して下さいよ、私は、彼女に話し掛けたりしてません。
カウンターの端で、独り愉しく、ウイスキーを呑るだけです。
…ただね、女性の辛そうな声は、意外と耳に入るモンなんですよ。」
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