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重いオーク材の扉を開いて、暗がりの路地へと足を進める。
街外れに位置する、親父さんの店から、ノーラのジムへの道のりは、そう遠くはない。
俺は、ゆっくりと歩いて、アルコールで、じんわりと緩んだ脳髄に、出来るだけ沢山酸素を送り込んでやる事にする。
シティ・ナゴヤに入港する、シィンやルナ達の事は気掛かりだが、街に潜伏中の俺には、どうする事も出来ない。
ただでさえ、派手な立ち回りを演じて、要らない世話を掛けてるってのに、これ以上、親父さんの手を煩わせた日には、放り出されたって文句は言えない。
…好い酒だった。
久しぶりのハードリカーだったが、たまにはモルトも悪くはない。
…面白い奴とも知り合えたしな。
まるで、モヤシのようなシィンとは、全く正反対の長身、ロングコートに隠れてはいたが、適度に鍛えられた、しなやかなバネを感じさせたアベルの体躯を、俺は思い返していた。
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