流転

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いつでも真夜中のような、暗闇の最下層。 それでも、本格的に街が目覚める夜の時間を迎えて、街には人が溢れている。 上の階層からの客達が、一時の快楽と、自己の開放を求めて、この街へと降りて来るのだ。 ふと、頭上を見上げると、エレベーターシャフトの発する静電気が、遠くで、青白い火花を散らしている。 人混みの苦手な俺は、明るいメインストリートを避けて、やや細めの路地へと抜け出した。 ウォーキングするには、いささか不便な街だよな。 暗がりの中で、ポケットからマールボロを取り出した。 キンッ。 ジッ。 ボッ。 手を翳して、マールボロへと火を移す。 排気口が近いらしく、谷間風のような、強いビル風が時折吹き付けて、少し手間取ってしまう。
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