流転

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煙を吐き出して、キチンと着火した事を確認する。 ビル風に煽られて、マールボロの小さな炎が、赤々と輝いて見える。 …ジジッ。 もう一口吸い込むと、更に輝きを増して、捲紙がはぜるような音を立てた。 ゆっくりと歩きだす。 風が、コートの裾や襟をはためかせる。 半ブロックほど歩いて、風を避けるように角を曲がる。 また半ブロック進む。 角を曲がって、風に向かって歩く。 また半ブロック。 また曲がる。 俺は、路地裏をジグザグに歩いて行く。 ポケットの中の手の掌が、少し汗ばんでいた。 アルコールのせいじゃ無い。 運動不足のせいでも無い。 極度の緊張状態による発汗作用。 …俺は、どうやら付けられているらしい。 誰に?
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