騎体

67/81
9079人が本棚に入れています
本棚に追加
/803ページ
明朗なオペレーターが、珍しく口ごもる。 「…ただ、何かな?」 俺は、周辺の状況をモニターしながら聞き返した。 モニター上に、空中要塞型を模した標的が表示されれば、撃ち落としてから帰投するつもりだ。 「…騎体と仮想敵の性能差が有りすぎて、正確なデータ採取には、もう少し模擬戦を繰り返してみませんと結論は出せないと云う意見もありました。 あくまで〈意見〉と云うか〈私見〉と云ったレベルですが。」 …なるほど。 俺は、コクピットの中で独り、幾度か頷いた。 「それは、どなたからの意見なのかな?」 恐縮した様子のオペレーターに、俺は少し、砕けた口調で話しかけた。 頭の硬い研究員と兵装開発の技術員が、ハンガーで口論でもしたのかも知れない。 俺は、オペレーターの女性達には、余計なプレッシャーを感じて欲しくなかった。
/803ページ

最初のコメントを投稿しよう!