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シルバは全く視界がきかない、前後不覚の暗闇の中に立っていた。
前方にぼんやりと白い人影が見える。
───…ちゃん…兄ちゃん…
『…誰だ?僕を呼んでいるのは…』
…お兄ちゃん…
『ボクを…ボクを呼んでいる…お前は…』
人影は濃さを増し、一人の少年の姿を形作る。
綺麗な青い髪を持つその少年の瞳の奥には、憎悪と悲しみが渦巻いている。
『お前は…デイン…!?』
シルバは目の前の少年の名を…自らの弟の名を呼んだ。
少年は薄く笑う。
"お兄ちゃん…どうして…"
『えっ?』
"どうして見捨てたの…?"
少年の頭から鮮血が滴る。
顔面蒼白になっていく。
"どうして…どうして…"
その姿はまさしく…死人のそれだ。
『ひっ…う…ぅああぁああああぁあああ!!!』
シルバはがばっと飛び起きた。
「シルバ!」
「シルバさん!大丈夫ですか~!」
そこにはあかあかと燃える焚き火、泣きそうな顔のガンとユリア、そして見知らぬ赤毛の少年がいた。
「あ…」
「心配したんだからな!もう!」
今にも泣きそうな顔でガンがシルバの手を握る。
「良かったです~」
相変わらずのおっとり口調ながら、ユリアは安心した様子で抱き付いてきた。
シルバの顔が見る見る赤くなる。
その時、ユリアの肩越しにあの赤毛の少年の姿が目に入った。
彼はガン達の様子を微笑みながら見ていた。
何処かの軍の制服のような、やたらボタンの多い服を着込んでいる。
腰には刃渡り30cmほどのショートソードと、白と黒の拳銃をそれぞれ一丁ずつ吊っていた。
短く刈り取られた赤毛に、髪と同じ緋色の目をしている。
中肉中背、といったところか。
童顔で筋肉もあまり無いため、年下に見えた。
シルバが青年を観察しているのに気付いたのか、ガンが説明した。
「シルバ、この人はオレ達を助けてくれたんだよ」
「怪我の手当てもしてくださいましたし、とても親切な方です~」
ユリアが補足する。
見れば三人の体のあちこちに包帯が巻いてあった。
その時赤毛青年がシルバに近寄って隣りに座った。
「シルバ君、だよね?」
「あ…ああ」
「大丈夫かい?随分うなされていたみたいだけど」
「ああ…」
上の空でシルバが答えた。
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