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「そして、自らの力をも六つの宝石に込め、世界に散らし、息絶えた…かぁ。あっ、引いてる引いてる!」
言って金髪の青年は本を閉じ、近くにあった釣竿を思い切り引いた。
パシャッという軽快な音と共に、食い逃げ後の釣針が宙を舞う。
当の食い逃げ犯は優雅に水の中を舞っていた。
「…ちくしょー」
悔しそうに呟いた後、青年は釣り道具を片付け、川辺から立ち上がった。
村の中を散歩がてら家へと向かう。
雲一つ無い、真っ青な空。
澄み切った美しい水の流れる川。
まさにクリアタウンと呼ばれるに相応しい美しい村である。
かなり大きめの豪華な家の前を通り過ぎた時だった。
「ガ~ン!」
「ん?」
ガンと呼ばれた金髪の青年が振り返ると、その豪邸の5階の窓から、青い髪の細身の青年がこちらを見下ろしていた。
「おい、今行くから待っていろ!」
青い髪の青年は叫ぶと、一旦引っ込み、しばらくして外に出て来た。
「久しぶり、シルバ」
ガンが嬉しそうな顔をする。
「ああ、一週間ぶりだ」
シルバと呼ばれた青い髪の青年は、溜め息をついた。
「最近塾と家庭教師以外にも予定がたくさん入っていたからな」
「シルバは忙しいもんね」
シルバはふん、と鼻で笑う。
「ボクの様な上流階級の人間ともなれば当たり前だ」
いつものように強がって威張ってはいるものの、少し疲れている顔をしている。
伊達に幼馴染みをやってきたわけではないので、ガンはシルバが疲れていることをちゃんと見抜き、にっこりと笑った。
「じゃあさ、久しぶりに三人で遊ぼうよ!!」
「は?」
「……駄目かな?」
「別にボクはかまわないが…」
「決まり!ユリアも誘いに行こう!!」
ガンは叫ぶと、もう一人の幼馴染みの少女ユリアを誘いに、彼女の家に向かって突っ走る。
その後ろをシルバが二度目の溜め息をつき、よたよたとついていった―――――。
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