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壊れたイスや机。
花瓶が床に落ちて割れ、花や水が飛び散っている。
さらに、イスや机の破片や割れたガラスが床に散乱していた。
そして、そのリビングの窓際にユリアはいた。
―――二十歳前後ほどの青年に両手を拘束され、口を塞がれた姿で。
その青年は背が高く、精悍な顔立ちをしていた。肩にかかる長い髪は濃いブルーで、耳が尖っている。
「ユリア!!」
ガンが叫んで駆けだそうとするが、シルバに後ろから押さえられた。
「シルバ!!放せ!!」
「馬鹿!向こうの手の中にはユリアがいるんだぞ!!」
シルバはしっかりとガンを押さえ、ガンは唇を噛み締める。
「その耳…お前、エルフか?」
「さぁな」
青年はシルバの問いを適当に受け流す。
「悪いけど、お前等に用はねぇんだ。用があんのは姫さんだけ」
言って彼は窓枠に足をかけた。
「じゃあな」
「あっ!待てぇ!!」
ガンが駆け寄るが、青年は外に飛び出した。
その時、青年のマントが変形し、翼の形になり、彼の体は宙に浮いた。
「あばよ」
彼は軽く微笑むと空の彼方に飛び去った。
その腕にユリアをしっかりと抱えて。
「信じられない…」
シルバが呆然と呟いた。
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