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仕事からの帰り道。
いつも通る道を歩いているだけなのに何故かいつもと違うように感じる。
ただいつもと違うのは何処か懐かしい音が、聞こえてくるという事だけなのに。
いつの間にか握ってた拳に更に力を込める、ドキドキと高鳴る胸。
まさか、いや、でも、そんな…
自分の心と葛藤しながらも角を曲がってはいつもの帰り道、駅の広場。
そこの広いスペースに見慣れた赤と金と紫。
低い声が織り成す歌声は耳に心地良く響く、赤
その男らしい指先からは信じられないぐらい繊細な音を奏でる、金
楽しげにカホンに座ってリズムよく叩いて音を繰り出す、紫
昔よく見た光景がそこには広がってた。
逃げなきゃ
ここから立ち去らなきゃ
そう思うのに体は動かない。
皆、上手くなったな。と心の中で現実逃避。
彼も、前みた時よりカッコよくなってる
胸が高鳴る、学生時代の淡い気持ちが込み上げてくる
その時曲が止まって彼が顔をあげた。
いつも着流しをきている彼、金ちゃんと目があった。
周りの動きがゆっくり、スローモーション、そして止まる。
金ちゃんが目を見開いて何かを言おうと口を開いた瞬間大きな声が響いた
「亀!」
「亀ちゃん!」
懐かしい声に気持ちが溢れ出してくる。
こちらに向かって走ってくる二人から逃げるように僕は急いでその場から立ち去った。
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