◆コイビト

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甘い香りを漂わせ、タバコの匂いをさせて、ささやいた。 「……………えっ。」 彼の言葉を理解するまでに、僅かな時間を要した。 彼は薄い微笑みを浮かべ、僕に近寄ってくる。 「お前が、幸せにしてくれる?」 今度は、耳元で誘うようにささやく。 僕は壁を背に、動けない。 彼は 僕を 言葉一つで拘束し…………た。 「何……を…………言って………………。」 「俺を、気持ち良く、して」 彼は右手で、太腿をさする。 カッと、僕の顔が熱くなる。 ―からかわれた!! 「やめ……!!からかうなよ。」 「からかってなんか、ないよ。初めはそのつもりだったけど…。」 「誰でも…いいよ…幸せにしてくれるなら…。」 “自暴自棄”そんな感じに見えた。 繊細で脆い、ガラス細工の様な茶色い瞳には、何も映ってない。 光を反射するように、全てをはねのける。自らに取り込むように見せかけて…。
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