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半年前、彼を初めて見たときから何故か、ひきつけられた。
きっかけは覚えてない。
他愛のない事だったと思う。
初めは写真の被写体にしたいと思った。
次に笑顔が見たいと思った。
それから半年間ずっと君を見ていた。そして気付いた。
君が高橋教授の事が好きだ…という事に。
「嘘つき」
もう一度、彼の背中に向かって囁いた。
「なに?」
突然、彼が振り向いて声を掛けてきた。
「なんでもないよ…」
『今日はこれで終わります。来週までにレポートを提出して下さい。』
高橋教授のバリトンボイスがスピーカーを通して講堂に響く。
帰り支度をする学生でざわざわと講堂内が騒がしくなった。
学生の波に紛れて腕を掴まれ、引っ張られる。まだざわつきの残る講堂で、彼と対面する。
初めて彼の近くに立った。
思っていたよりも彼の背は小さかった。
「嘘つきって何?俺のこと?」
茶色い瞳で僕を睨みつけた。
「………………」
「……ちっ」
僕は黙る。
彼はイライラしながらタバコを取り出し火をつけ、煙りを僕に向かって吹き付ける。少しむせた。
「学内は禁煙だよ。」
「……ちっ」
彼は携帯用の灰皿を取り出し、乱暴にタバコを押し付ける。
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