◆彼

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半年前、彼を初めて見たときから何故か、ひきつけられた。 きっかけは覚えてない。 他愛のない事だったと思う。 初めは写真の被写体にしたいと思った。 次に笑顔が見たいと思った。 それから半年間ずっと君を見ていた。そして気付いた。 君が高橋教授の事が好きだ…という事に。 「嘘つき」 もう一度、彼の背中に向かって囁いた。 「なに?」 突然、彼が振り向いて声を掛けてきた。 「なんでもないよ…」 『今日はこれで終わります。来週までにレポートを提出して下さい。』 高橋教授のバリトンボイスがスピーカーを通して講堂に響く。 帰り支度をする学生でざわざわと講堂内が騒がしくなった。 学生の波に紛れて腕を掴まれ、引っ張られる。まだざわつきの残る講堂で、彼と対面する。 初めて彼の近くに立った。 思っていたよりも彼の背は小さかった。 「嘘つきって何?俺のこと?」 茶色い瞳で僕を睨みつけた。 「………………」 「……ちっ」 僕は黙る。 彼はイライラしながらタバコを取り出し火をつけ、煙りを僕に向かって吹き付ける。少しむせた。 「学内は禁煙だよ。」 「……ちっ」 彼は携帯用の灰皿を取り出し、乱暴にタバコを押し付ける。
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