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「筆記試験ご苦労様でした。次の実技試験に入るまで時間がありますので、ゆっくりしていてください。もちろん、他のクラスの実技試験を見に行っても構いませんが、自分の試験に遅れないようにしてください」
試験官はそういうと、回収し終えた解答用紙を持ちながら部屋をあとにした。すると緊張から解放されたのか、受験者たちは皆それぞれ近い席の人と会話を始めた。中には、他のクラスの試験を見に行く人もいた。
当然、会話の内容は先程の試験の難易度等だった。難しかった、易しかった、それぞれ返答は違うものばかりだった。そんな会話を聞きながら、少年は自分の席でゆっくりくつろいでいた。
「やっぱり、人それぞれ違うものなんだなぁ…。でも今の試験、ただ知識が知りたいからやったものじゃないような気がするけど…」
「なんだ、お前気付いたのか?」
「うっ、うわぁああ!」
不意に隣から話し掛けられたため、驚いた拍子に椅子ごと後方に倒れてしまった。
「だ、大丈夫か?」
「あいつつ、た、たぶん大丈夫」
後頭部を抑えながら少年が立ち上がろうとすると、誰かから手を差しのべられた。
「大丈夫?」
「あっ、ありがとう…」
手を握り、ようやく手を差しのべてくれた人がわかり、自然と声のトーンが低くなってしまった。
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