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観客席にまだ残っていたシリウスとグレンは、鉄柵がエアリスに向かって飛んでいくのを見ているだけしかできなかった。だれもがエアリスの死を予想した。
その時、
「これぐらい避けられないなんて…今年の受験者はレベルが低いな」
そう言いながら、騎士団のローブを羽織った一人の男が、杖を鉄柵に向けた状態でエアリスと鉄柵の間に割り込んだ。
そして、
「だるい」
そう一言つぶやいた瞬間、鉄柵は男の体の周りに纏う冷気の壁によって凍り付いただけではなく、何百キロもある鉄の固まりが軌道を変え軽々と吹き飛んだのだった。
結界、鉄柵は二人からみて左の壁にめり込み、最悪の事態を免れた。
突然のことに観客、隊長達はもちろん、被害者のエアリスも何が起こったかわからないでいた。しかし、エアリスが助かったということに変わりはなく、一気に歓声がわいた。
歓声で包まれる中、その男だけは鉄柵が飛んできた方向を険しい表情で見ていた。
「ちっ…キマイラか、面倒だな」
そこから出てきた元凶、それはキマイラという生物だった。キマイラという生物は、複数の生物を錬金術によって生み出される人口生命体の事である。このキマイラの体は大きくはないが、キマイラ自体の力、知能共に普通の生物とは比べ物ならないぐらい高い。
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