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「それも失敗作か」
キマイラ自体が完璧とは言えない生物なのだが、今二人の前にいるキマイラはそれをもっと下回る半端物だった。犬と羊らしき生き物の頭が一つずつ、体に鱗があることから海洋生物が使われたのだろう。しかし、その体は既に腐敗して所々に穴が空き、肉片がずり落ち原型をとどめてはいなかった。
「何…あれ…」
エアリスはキマイラを見るのが初めてなのか、男の後ろに隠れながらそれを見ていた。
「おいお前、スキルは何を取得している?」
男はキマイラを見据えたまま、突然エアリスにスキルに関して質問してきた。口調はやる気のない声だが、眼だけは先程までのものとは違い、やる気のある眼をしていた。
「い、一応アイスジャベリンまでなら…」
「上出来だ。お前に手伝ってもらうから、今から言う指示を頭に叩き込め」
「…え、えぇぇぇぇえ!?」
そして、姿は見えないが確かにそこにいる何者かが、その光景を今は誰もいない隊長達が座っていた席から眺めていた。
「まさか、あの男のデータを分析できるなんて、嬉しい誤算だ。だが、仕掛けはこれだけじゃないがな…」
今まで空を覆っていた雲がゆっくり晴れると、普通ならありえないものがそこに現れた。
微かに揺らぐ空間、そして太陽光により作られた影がそこに人がいることを証明したのだった。
「さぁ、ゲームの始まりだ」
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