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杖をキマイラに向けたままトドメを刺そうとしないジェイは、あろうことか自分の杖をおろしてしまった。それを後ろで見ていたエアリスは、突然のことに驚きを隠せなかった。何故トドメを刺して終わらせないのか理解できなかったからだ。
「どうして終わらせないんですか?!」
ジェイはゆっくりと口を開いた。
「簡単なことだ。今から君がこのキマイラを殺すんだ」
「えっ?」
ジェイは、彼女に最も辛い役割を与えたのだった。そして彼は、
「お前達もよく見ておけ!!一つの命を奪う瞬間を!!」
と、観客席にいるシリウスとグレンの方を向き、二人に聞こえるほどの大きな声で叫んだ。
「これからお前達が入ろうとしている世界は、生きるか死ぬか!殺すか殺されるかの狭間だ!!
そして、命の重さを知れ!!」
この言葉が三人に重くのしかかった。自分達がこれから入る世界は、簡単に言えば殺しあう世界だ。命を奪う経験なんてものは普通ないだろう。もちろん、三人はそんな世界を知った上で騎士団の試験を受けた。しかし、現実にその場に立たされたエアリスは言うまでもなく、
「む、無理です!私には殺せません!!」
という結果だった。
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