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それの場の雰囲気に堪えられなくなったのか、少年は顔を真っ赤にしてソーサラー専用控室へと走っていった。
まだ笑いが残っている中、先程の黄金色の防具を纏った男が笑いながら少年の話をしていた。
「あんなチッコいガキまで部隊の入団試験を受けるなんて笑えるな!」
「ですよねぇ、ワイズさん!」
周りの連れ達も笑いながら同意しているが、他の受験者達はそんな彼等を非難の目で見ていた。
すると、二人の受験者がその男達の脇を素通りして受付の紙にチェックを付け始めた。いわゆる順番抜かしだ。それに気付いたワイズという男は二人のうち、赤い防具を纏った女性受験者の肩に掴み掛かった。
「おい女!てめぇ、順番を守れ!!俺が見えねぇのか!?」
一瞬の出来事だった。その女性の隣にいた漆黒を思わす黒いシンプルな服を身に纏った男が、どこから出したのか、黒い短剣をワイズという男の首筋に突き付けながら言った。
「…そのお方に触れる右手を今すぐ離せ。さもなくば、貴様の首を体から切り離す」
「うっ!」
その場は先程とは嘘のように静まり返っていた。それは驚きによるものだけではなかった。短剣を首筋に突き付けている男の目は、冷酷なものだった。人間以外のものを見るような目といったほうが良いのだろう。その場にいる誰もがその目から殺意が感じられた。
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