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「メイファス、やめなさい。頭の悪いバカは放っておいて早く行くわよ」
女性の言葉で、メイファスという男は首筋に突き付けた短剣をゆっくり離すと、何事もなかったように彼女の傍へ移動する。
放心状態の男は、去り行く二人をただ見ていることしかできなかった。
「ふっ、今年は面白い人材が数人いるみたいだな」
少し離れた門の上からその光景を見ていたフードを被った一人の男が、隣にいる女性に話し掛ける。女性は、男より一歩前にでながら風によって乱れた自分のフードを直しながら答えた。
「えぇ、ある意味面白そうな人材ね。特に…」
「あの少年か?」
男が自分より先に言ったためか、女性は腕組をしながらニコッとしながら頷いた。風がよりいっそう強くなる中、二人は後方にある塔を見上げた。
「ナイアス様も見てるのかしら」
「そりゃ~…」
男は苦笑いでポケットに入れていた右手を出し、二つのクルミを右手で擦り合わせるように動かし始めた。
「見てないだろ。
どうせまた危ない研究でもしてるんじゃないか?」
二人は呆れた顔で塔を眺めている。しまいには二人同時に溜息をつくほどだ。
「入団試験の挨拶にも来ないで、まったくあの爺さんは何考え…ん?」
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