第一話 「試験」

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「ったく~、いきなりライトニングはないでしょ普通。あなたの魔法をくらって動けるのは常人離れした奴ぐらいっすよ」 「ふむ、口答えができるぐらい元気ならもう一発落としても大丈夫かのぉ?」 表情自体見えないが、その声からは遊び心満載な感じが溢れ出ている。それを感じ取ったのか、男は焦りながらそれを断った。 「話しは戻るが…あの少年を注意して見てやってくれるかの?あの時みたいになるのは避けたいからのぉ…」 「…あの時って、数年前にあった本土炎上のことっすか?」 男は震える女性の頭をフードごしに撫でながら、ナイアスに問いただすが、ナイアスは何も答えず黙り込んでいる。数分の間沈黙が続き、男はそんなナイアスの気持ちを悟ったのか溜息をつき、受験者名簿を女性の手から受け取ると、開いてあったページに目を通した。 「だが、この少年の名前とあいつの名前は違う。共通点があまりにも少な過ぎる」 それまで黙っていた女性は男性のローブの袖を掴みながら、その話の最終的な結論を口にする。 「でも、あたし達はあの人に少しでも関係する人を監視、必要なら抹消という運命を背負っているのよ。あの日、あの場所から…」 その時、二人が深くかぶっていたフードが突風により外れると、彼らの素顔があらわになった。
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