第一話 「試験」

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男の髪は茶色の短髪、美しい金色の瞳をしていた。 「この傷とあの時のことは忘れはしない、一生…」 男の顔は所々に火傷の痕がついていた。それは最近付けられたものではなく、だいぶ昔に付けられたものらしく、痕は治りかけの部分とくっきりと残っている部分があった。 無表情で海を見ている男を心配したのか、男の頬に女性は無言でそっと右手で触れる。女性の右腕の手首辺りにも同様に火傷の痕がついていた。男はその手を握ると、無言のまま女性の火傷の痕に触れた。 「お前だけでもあの場から離れるようにすれば、こんな痕が付かなくてすんだ…すまない」 すると、女性は首を横に振りそれを否定した。 「あの時、私だけ逃げてもこうなっていたと思うし、あなたを置いていくなんて考えられなかったわよ。それに、あなたの傷はあたしのせいで付いたもの…ごめんなさい」 紫色の瞳から一筋の涙が零れ落ちた。男はその涙を指で拭き取ると、女性の銀色の髪を頭と一緒にグシャグシャと乱した。 「バーカ、いつ俺がお前のせいだっていったんだよ?ったくよ~、そういうところがあるからお前は甘ちゃんなんだよ。それじゃ一生俺には勝てないぞ」 ケラケラと笑っている男を見ると、女性は安心したのか笑みが零れた。
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