0人が本棚に入れています
本棚に追加
「暑っ………」
ぐったりとして、
目の前に広がるグラウンドを睨み付ける。
「ほい、帽子」
「アリガト」
千佳が私に帽子を被せる。
「もっと自分でお日様対策しなよね」
苦笑いしながらでも、千佳は責めてるわけではない。
「うん、気をつける」
次回は…なんてうっかり続けそうになった口をつぐむ。だって、次回なんてあるかわからないもの。
私は視線を斜め下にスライドさせた。
彼は緊張と、興奮の入り交じったような複雑な顔でまっすぐ前だけを見ていた。
私の、
愛しい人。
高校三年の夏、
甲子園予選、
私たちの学校は運悪く、
優勝候補と第一試合でぶつかった。
負けるのは誰が見ても明らかだけど、何故か期待してしまう………万が一の可能性に。
.
最初のコメントを投稿しよう!