三日月 ―ミカヅキ―

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人は心に闇と光を持つ 闇―‥それは時として人をも飲み込みそれは狂気なり刃に変わる   憎しみ、恐怖、そして愛故に‥‥ そして芽生える狂気を金に変える者たちもまた存在する   身分、世間体を守り、罪を犯さず そぅ――なによりも自分だけのため   多額の金により罪を請け負う者が‥‥今宵この場に現れる         ピピピッ   『―‥時間‥』   建物の屋上男が静かに今宵の明かりを見上げていた 下界にはそれとは対象的な暗く闇に覆われた町並みが広がり静まり返るそれが今の時刻を示してくる 時を知らせる音が途切れると共に分かっているはずの時刻を確認した   静かに立ち上がり再び空を見上げた彼は月明かりに照らされながらも深く闇に包み込まれている 表情の無い冷たい瞳をする彼は何を想い月を見つめているのだろうか――‥   ガガガッガ 「‥三日月 準備はいいか?」   左耳に着けられた黒い物から低い男の声が流れてきた 軽く手を沿えながら小さく返事を返しゆっくり月から視線を外し振り返ると建物内へと繋がる扉に向かって歩き始めた すると再び耳元から低い男の声が流れてくる
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