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ふ、と時計を見ればまだ七時。
学校に居る人と言えば朝練生徒くらいで熱気と言うか、暖かさがまったく無く、廊下の寒さが身体にチクチクと刺さる。
これはさっさと職員室で温かい珈琲を頂くのが一番だ、と自然と足が進む。
銀時も同じ考えなのだろうか歩調がほぼ同じだ。
さっさかと歩き職員室前までたどり着いて入ろうとすると、左腕が後ろへと引かれた。
強く引かれたわけではないので、ふらりと少しフラついた。
振り返ると細身のすらりとした、自分よりも頭一つ分以上小さな女生徒。
隣にいた銀八が不審そうな顔をして「何?知り合い?」と尋ねてくる。
知らないからって‥仮にも生徒なのだから、彼氏の家に知らない女が。みたいな言い方はどうかと…
「知っちゅうっちゃあ知っちゅうよ。3Aン子やお?」
そう問掛ければ、コクリと小さく反応が返ってくる。
当たりらしい。
「なァンで、モジャパーのお前が、A組のこんっっな可愛らしい子と知り合いなんだよ。
3Aの天才児共になんて、馬鹿のお前にゃあ、ひっくり返ってもお勉強教えらンナイデショ?」
こちらを馬鹿にしたように、ちらりと流し目で見た銀八は「ネェ?」と言いながら女生徒の顔を覗き込む。
「おんしゃも教えられんキ、五分五分ろう?」
そう言ってやれば、そりゃそうだけど…、と少し拗ねてしまった。
「で、坂本はなんでこの子のこと知ってるワケ?」
直ぐに立ち直ったらしく、話を戻してくる。
「ぁー…ちくっと前、3Aの数学が自習んときたまたま行っただけじゃ。確か、佐野さん。じゃなが?」
女生徒改め、佐野さんは頭が取れてしまうのではないか、と言う程激しく上下に頷いた。
なんちゃあ、小動物の様じゃキニ、かーいらしーのう。
「坂本ォ、一時間ぽっちで顔だけならず名前まで覚えれる頭してんだナァ?エ?それで長年付き合ってる俺の名前間違えるって、どう言う了見だよ。」
…………面倒なことになりそうじゃ…‥シカトの方向で。
「で、佐野さんは何用かの?」
「ぇ、何?銀さんのことはシカト?シカトぶっこいちゃってるワケ?!」
銀八が横でごちゃごちゃと言っているけども、聞こえない聞こえなぁい。
少し放っておくと拗ねたのか、ぼそぼそと愚痴を言いはじめた。
一方、佐野さんは先程よりも一層挙動不振さが増し、左腕を掴む力が少し強まった。
ちらりと腕時計を見ると七時過ぎ。
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