否定

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「じゃあ、アレに関して、情報が?」 「そういうこと」 白いテーブルクロスの敷かれたテーブルを挟んで、貴の向かい側には一人のブロンドの髪とエメラルドの瞳を持った少女――真奈がいた。 彼女は黒と白が相合わさった模様が彩られたドレスを着て、胸元に小さな鳳凰が刻まれた金のペンダントを架けている。 対して貴は制服姿だ。上はブレザーに黒ネクタイをしているだけ。 どちらとも服装はともかく、このような場所ではしないような話をしていた。 「ちょうど、私が帰ってきたあたりに変な話を聞いてね。その辺を調べてみたんだけど、変わった事件があってね…」 「変わった事件?」 貴が尋ねると彼女は「うん」と頷いて、ポーチからファイリングされた紙を貴に渡した。 貴が見るとそれは地方の新聞だった。というよりはその区域内だけで配布されている情報版みたいなものなのだろう。 「陸稲(りくとう)中学の生徒が不審死?」 「そう。陸稲中学ってのは神城町から七つくらい隣の駅にある中学なんだけどね。そこで最近、不審死が立て続けに起きてる」 貴は促されるようにファイリングされた紙をめくっていく。次に現れたのは切り抜きの記事だ。 『陸稲中学の女子生徒、自室で首吊り自殺。警察、及び学校側は少女の周辺に虐めなどがあったかを調べている』 その隣も似たようなものだった。 『陸稲中学の女子生徒、学校で飛び降り自殺。少女は自殺直前、ノイローゼ気味であったと学校側は発表した。何故そのようなことであったのかを現在調査中である。』 そのような事件が他にも二軒あった。どれも陸稲中学のものであった。 「確かに不審なことだが、事件と言えるほどではないんじゃないのか?それに不審死というよりはただの自殺に見える。悪いことは立て続けに起きるとも言うし、たまたま連続して起きたようにも見えるが…」 貴はぺらぺらと適当にファイルを見終わった後、テーブルに置いた。 真奈は「そうなんだけど…」と言って、視線をファイルに落とした。 「次に自殺するかもしれない少女を見つけていると言ったら……どうする?」 真奈は少し脅かすような勿体振った口ぶりで貴を一瞥した。貴はやや、ピクリと眉が動いたものの、依然として憮然とした顔付きである。  
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