否定

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  「どういうことだ?」 「そのままの通りよ。これらのことについて調べてたら代わった人を見付けちゃってね…」 と言いたくない風に真奈は前に向けていた視線を右の窓の外へと向けた。 闇に染まった所に散らばる宝石はどこか淋しく、真奈には無機質なものに見えた。 際限なく続く光の行進…それは水の流れと同じで闇が巣くう空と同じだ。 だが、それもいつかは終わりが来る。闇が巣くう空もいつかは太陽に照らされる。だけど真奈に巣くう闇は晴れることはない。晴らしてくれる人はいないから…。 「…速水?」 「えっ!?」 物思いにいつの間にかふけっていて、ハッとなると貴は前で怪訝に真奈を見ていた。 「ごめん、ぼうっとしてた」 ハハハと枯れた笑いをする真奈に貴は何も聞かず、フッと息を短く吐く。 「それより、貴。プライベートなんだから真奈って言ってよ」 「………」 貴は仏頂面で何も答えず、視線を左の窓へと落とした。 「もう、ケチなんだから……。まぁ、それがいいんだけどね」 ポッと頬を赤らめた真奈に呆れ気味にため息をつきながら、「で、続きは?」と先のことを促した。 「そうだったね、私が一昨日その町で調べてる時だったんだけどね。その時に変わった人を見掛けたの」 「変わった人?」 「うん。その娘ね、傍目からでもすぐにわかるくらい疲れて見えてね。足取りも危なっかしかったの。目は死んだ魚みたいに光が見えなかったし、持っていた鞄がずれおちかけているのに、それに気付かないまま歩いていたのよ」 そう言って、真奈は一枚の写真をポーチから出して、貴に渡した。 見るとそこには二本の黒髪のおさげをぶら下げた制服姿の少女が写っていた。 少女のほぼ真っ正面より、やや左斜めの位置からそれは撮られている。 撮られているのに気付かないほど、疲れていたのだろう。写真の彼女の目線はこちらにはなかった。 「これ、無許可だろう?」 貴は少し口元を引いて笑みながら、真奈を見上げる。真奈は苦笑いをして、目線を逸らした。 それを見送ったあと、貴は再び写真へと視線を送る。 確かにそこに写っている少女は傍目からでも疲れている風に見えた。  
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