否定

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それらしいものが発見されても、すぐに調査で違うとわかる。肩透かしを何度も受けたのが一、二年の成果だった。 だからこそ、三年になり、母親の情報を見つけれたのは嬉しかった。捜して三年目でやっと見つけることが出来たのだ。それに呼応するかのように夏にも手掛かりが親の元から届いた。 厳密に言えば、母親からの手掛かりで呼び寄せられたものなのだが、それでも大して気にはならない。 それよりも気になったのは、島の屋敷が炎上する中、何故あいつは自分を殺さなかったということだ。 あのまま、ひとひねりで殺すことも容易に出来た。あの状態なら力を使わずとも首を絞めれば殺すことは出来る。 そして最後の言葉… 『大丈夫。殺しはしないわ。あなたは必要だからね』 これはどういう意味なのだろう。 貴には全くわからなかった。その言葉の真意を探してみようと考えるが何も浮かんではこない。ただ無意味に時間が流れていくだけだ。 もっとも本人に聞けば一番早いのだが、そんなことを教えてくれるとは思わないし、いつ会えるかもわからない。それにされてからでは遅い。 あの言葉は自分を何かに使うということだ。それが為されてからでは遅すぎる。それをされることによって、自分は死んでしまうかもしれないから。 「私はそれが関係してるとは思えないけどなぁ。もっと根本的に貴は変わってると思う」 真奈はゆっくりと首を振った。 「『情熱家より、冷淡な男のほうが簡単に女に夢中になるものだ』って、誰の言葉か知ってる?」 「……ツルゲーネフ?」 貴が訝しげに聞くと真奈は「そうよ」と頷いた。 「まさに、今…あなたはそれ」 真奈はどこか小悪魔めいた笑みを浮かべて、貴を指差す。それが全く理解出来ないように貴は頭を傾げた。 「心境の変化は女の子でしょ」 手を重ねて、顎に杖を作りながら、ジッと貴の目を見詰める。貴はそれから逃げるように、それでいて、しれっとした顔付きで顔を窓の外に向けた。 「小谷美樹」 不意に真奈はその名を言った。今日、貴に会う前に調べた名前のことだ。 「相澤花梨」 「笹川陽子」 「大西紗耶香」 次々と真奈は名前を適当に言っていった。その名は全て、貴と同じクラスのもので、女子だ。 貴は何がしたいんだ?と言いたいばかりに怪訝な顔で真奈を見る。そこで、真奈がその答えをあげるかのように口を開いた。 「貴が気にしてる相手」  
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