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貴は惜しみつつも本をポケットにしまい込み、真奈が飛び込んでこないか、注意しながら彼女を捜した。
屋敷を一回りし終え、屋敷から少し離れた林の所に入った所で貴は目を疑った。
真奈は仰向けになって倒れていたのだ。顔は蒼白になり、唇も少し青紫色に変色していた。
貴はどうしていいかわからず戸惑った。この時の彼は頭は良く、成績も良かったがこういう場合の時、どうすればいいのかわからなかったのだ。
取り敢えず、彼女を抱き起こして頬を少し叩いて、彼女の名前を呼んだ。しかし彼女は返事をすることはなく、目を閉じたままだった。
貴は大声を張って、助けを叫ぶ。だが、そこは林の中だったので使用人の誰もいなく、名前を呼んでも誰も来なかった。
貴は舌打ちをし、彼女を背中を背負った。
彼女の体は思ったより軽く、いつも抱き着いてくる頃よりは軽かった。
貴は彼女の体を大きく揺らさないように走りながら林の中を駆け抜けた。
頭の中には、彼女を早く誰かに看せなければ、ということで頭がいっぱいだった。早く彼女を誰か医者に看せなければ死んでしまう、そんなのは嫌であった。それは自分のせいになってしまう。構うことをしなかった自分の…。
そう思っていたからこそ、次に聞こえたある言葉が鈍器で打ち付けられたように強く響いた。
「いやぁー、貴の背中って意外に大きいね」
ビルのちょうど入口で貴は背中に乗っけていた真奈を落とした。
真奈はキャッと悲鳴を上げて、尻餅をつく。
まるで見下すように笑みながら、貴は真奈を見下ろした。
真奈は苦痛に顔を歪ませながら、お尻を押さえた。その顔はもう紅潮してなどおらず、目尻も垂れてはいなかった。
「忘れていましたよ。あなたはお芝居がお上手なのを」
怖いくらいなまでの清々しい笑顔を振り撒いて、真奈を見下ろし……見下した。
「えへへ、ばれちゃった?」
全く悪びれた様子もなく、片目を閉じ、舌をぺろっとだしながら頭を掻いた。
もちろん貴がそれを可愛いなどと思うわけもなく、それどころか怒りの沸点を下げさせることになり、怒りは早く迎えた。
「どうなるか……わかっているな?」
「…えっと…アハハ……」
渇いた笑いをして、床に座り尽くす真奈に貴は鈍い光を放った視線を送った。
言うまでもなく、貴がこのあと、真奈にとって非常に厳しいことをしたのは言うまでもない。
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