悪魔の贄

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  その声の主は女性で声色でどうやら中年かそれ以下だとわかる。 「前日お伺いさせて頂いた速水の者ですが……」 「速水?」 それを聞いたのは千代だった。 「貴はここに来たことがないから、私の名前でね」 真奈が千代の耳打ちし、それを聞いて千代は納得する。 「そうでしたか、少し待ってくださいね」 そう声がして、インターホンが切れると数秒後に玄関のドアが開かれた。 中から出て来たのはこの家の主の妻であろう女性で、エプロンを着用し、髪型は髪先が外側にピンッと跳ね上がったボブカットでおそらく歳は三十後半ぐらいだろう。 「こんにちわ」 その女性は柔らかく微笑んで会釈した。それに釣られ三人も頭を下げた。 「もっと年上の方が来ると思ってたんだけど、学生さん?」 「はい。東京の神城高等学校の生徒です」 「まあ!遠いところからわざわざ……」 「いえ、東京と言っても端の方なので」 それ聞くと安心したのか、ふぅと彼女は息をついた。 「本当に、来て頂いて申し訳ないのだけれど。娘は風邪だったみたいなの」 「風邪?」 眉を潜めて貴が尋ねると彼女は恥ずかしそうに頬を赤らめた。 「そうなんですよ。昨日までは顔を真っ青にして寝込んでいたのに、突然今日朝になったら元気になって……。一応、今日一日は学校を休ませたけど、もう明日からは行けますよ」 元気を取り戻した母親は顔を満面の笑顔にし、それから申し訳なさそうな表情をして、招き入れるようにドアを大きく開いた。 「このまま帰ってもらうのも失礼ですし、少し娘の様子を見ますか?」 貴は一瞬、戸惑うような顔を見せ、言葉を探すように沈黙を見せたあと、 「じゃあ、少しだけ」 と言った。 玄関を入り、すぐに見えたのは新築の空気を露骨に出している廊下と階段だった。 綺麗にワックスがかけられ艶を見せている廊下は階段を真っ先に見せ、その逸れた方にはキッチンを見せていた。 「綺麗な家ですね」 「ありがとう。半年前くらいに引っ越した所なのよ。念願のマイホーム!ってね」 軽快に言って見せて、彼女は階段を上っていった。それに従い、三人も上る。  
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