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千代は真奈から受け取ったファイルを見ながら、友香のいる部屋へと向かった。
ファイルの中にあったのは殆どが、新聞の切り抜きで、その切り抜きの周りにペン書きで追記されたのが主だった。
千代はそれを読み上げて、階段のちょうど真ん中の所で足を止める。
千代は、それこそ有り得ないものでも見るような目で、その記事に食い入った。
「……陸稲中学の生徒が、数人自殺?」
千代はそう呟くと、顔をみるみる内に青ざめさせていった。自殺という言葉が千代の頭を強く響かせる。
そして、陸稲中学……これはこの家に行く時に通った中学ではなかったか? しかも、この家から陸稲中学に近いのなら、友香もその可能性が高い。いや、おそらくそうだろう。だからこそ、貴はこの記事を切り抜き、この家に来たのだ。
その生徒達が自殺したのには何か、超常的なものが関わっているから――。
そして、友香もその超常的なことに関わっているかもしれないから。
千代はどたばたと音を立てながら、階段を上り切る。半ば吹き飛ばさんとも言える勢いでドアを開けた。
「ど、どうしたんですか?」
中には目を点にさせながら、千代を見据える友香がいた。
千代はそんな彼女の問いを無視し、自分の問いを投げ付けた。
「ねぇ、あなたの行ってる中学で最近、自殺した人が何人かいるってホント?」
「えっ、いきなりどうしたんですか?」
「答えてっ!」
千代は懇願にも似た顔付きで、縋るように友香の肩に両手を置いた。
それに彼女は困ったように視線を泳がせてから、千代を見ようとはせずに頷く。
そこで、千代の手は力無くした風に友香の肩から滑り落ちた。
「本当だったんだ……」
千代は脇に置いたファイルを見下ろした。
友香は首を傾げて、「借りますよ」と一言入れてから、そのファイルを取り、中身を開いた。
「……これって、私の行ってる中学の新聞記事?」
「うん……」
「凄い、沢山張られてる。どうして、こんなものを?」
「私はまだ何にも貴に聞いてないからわかんない。でも、ひとつ分かることがある、それは自殺した人達は自殺したくてしたんじゃないことだよ。何か……怖いものにさせられた、そして、その犯人を突き止めるために情報を集めたりしてるんだ」
「……怖いものって、いじめっ子とか?」
苦笑いをしながら尋ねる友香に、千代は首を振って否定した。
「……幽霊とか、だと思う」
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