430人が本棚に入れています
本棚に追加
「……幽霊、ですか?」
「……うん。貴はそういうことに関していろいろと調べてるから。さっきも貴が言ってたでしょ?」
それに友香は頷いた。
千代は頭を俯けて、友香の置いたファイルを開いて、目を滑らせていく。
「でも友香ちゃんが無事で良かった。自殺なんて悲しいもん。残された人が。親なんて一番悲しいと思う。だって、いつの間にか、自分の気付かない所で子供が死んでるなんて……それに何が悪かったのか、わからないかもしれないんだよ。それが一番悲しい……」
千代は俯けた頭の視線の先にある拳を強く、真っ白になるまで握り締めた。
千代はこの時、あることを思い出していた。それはもう半年ほど前に、神城高校で起きた荒木事件である。
その犯人の少女は荒木が死んで絶望し、悲しんでいた。心内を誰かに見せるわけでもなく、たった一人で……。世間や周りには普通の少女であるように見せながらも、あることばかりを一心に考えていた。
――何で彼が死んだのだろう、何で彼が死ななくてはならなかったのだろう。自分のせいだろうか? 自分のせいで死んだのであろうか?
彼女はそう思い悩み苦しんでいた。
そんな折に飛び込んだ悪魔の言葉が彼女を地の底に落とし、復讐者とさせた。
――荒木は、自殺したのではなく、殺されたということ。
彼女の悲しみは瞬時に憎しみへと変わり、復讐するための起爆剤と化してしまう。
そして、復讐は着々と千代達の前で遂行されていった。
行っていた彼女もそれを行っていくのは辛かった。心が締め付けられ、大きな刃物でえぐられ、自分はもう人間ではないのではないか、と思われるくらい苦しかった。
それでも引き返せなかったのは、荒木の敵討ちと憎しみに彼女は強く強く、捕われていたから――。
最初のコメントを投稿しよう!