悪魔の贄

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「……幽霊、ですか?」 「……うん。貴はそういうことに関していろいろと調べてるから。さっきも貴が言ってたでしょ?」 それに友香は頷いた。 千代は頭を俯けて、友香の置いたファイルを開いて、目を滑らせていく。 「でも友香ちゃんが無事で良かった。自殺なんて悲しいもん。残された人が。親なんて一番悲しいと思う。だって、いつの間にか、自分の気付かない所で子供が死んでるなんて……それに何が悪かったのか、わからないかもしれないんだよ。それが一番悲しい……」 千代は俯けた頭の視線の先にある拳を強く、真っ白になるまで握り締めた。 千代はこの時、あることを思い出していた。それはもう半年ほど前に、神城高校で起きた荒木事件である。 その犯人の少女は荒木が死んで絶望し、悲しんでいた。心内を誰かに見せるわけでもなく、たった一人で……。世間や周りには普通の少女であるように見せながらも、あることばかりを一心に考えていた。 ――何で彼が死んだのだろう、何で彼が死ななくてはならなかったのだろう。自分のせいだろうか? 自分のせいで死んだのであろうか? 彼女はそう思い悩み苦しんでいた。 そんな折に飛び込んだ悪魔の言葉が彼女を地の底に落とし、復讐者とさせた。 ――荒木は、自殺したのではなく、殺されたということ。 彼女の悲しみは瞬時に憎しみへと変わり、復讐するための起爆剤と化してしまう。 そして、復讐は着々と千代達の前で遂行されていった。 行っていた彼女もそれを行っていくのは辛かった。心が締め付けられ、大きな刃物でえぐられ、自分はもう人間ではないのではないか、と思われるくらい苦しかった。 それでも引き返せなかったのは、荒木の敵討ちと憎しみに彼女は強く強く、捕われていたから――。  
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