悪魔の贄

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千代はどこと無く、苛立ちを覚えていた。 それは自殺を強要したであろう、何かである。 流石に荒木事件にように死ねとは言えないが、もし人間がやっているようならそれ相応の罰を受けるべきだ。 自殺というのは悲しみを生む。悲しむのは親だけではない、友人知人、さらには愛すべき人も同様に悲しむ。そして、悩まされる。 そんな時に自殺ではなく、他殺だと言われたら、彼等は必ず怒り狂うだろう。荒木事件の時のように。 だからこそ、今回のこのような事件は早く食い止めなければならない。原因があるのなら、早くに突き止め、解決しなければならない。 それは今、それらについて調べている自分達の使命なのであると、千代は確信している。 千代は無性に何かがしたくなり、立ち上がった。ここでちまちまと貴達を待ちながら、座っていることが出来なくなったのだ。 「どうしたんですか?」 「ちょっと、家の外に出て、貴達を見てくる。もう一時間は経っているのに貴達帰ってないもん」 千代はドアを開けて、外に出ようとした時だった。何かに足を躓いてしまって膝が折れる形となり、半ばしゃがみ込むようになってしまった。 そして、その瞬間、千代の頭の上を何かが掠めていった。掠めていったそれは壁にガッと鈍い音を立てて突き刺さった。 千代はその音に導かれるようにしゃがみ込んだまま顔を上げて、壁を見上げた。 壁に刺さっていたのは、紛れも無く包丁だった。  
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