第1章 姫と下僕

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店の名前は、 『カフェ・シンフォニア』姫の一番気に入りの店だ。大きなドアを開けると、コーヒーの薫りが、広がった。 「いらっしゃいませ、サファイアちゃん。今日も元気そうだね」 カウンターの中から声をかけてきたのは、この店のマスターだ。 「こんにちは、マスター」 そう言いながら、カウンター席に座る。 サファイア…姫のセカンドネームでもあり、モンスターハンターとしての名前だ。 ランチには、少し早い為か、客はいなかった。 「今日の朝市で、新鮮な茸が手に入ったんだ」 大きな茸の塊をカウンターの中からみせる。 「そうなの?では、茸のおすすめランチとカフェオレをお願いします」 「かしこまりました」 今日の天気は、どうだとか、隣の家に子猫が産まれたとか、世間話をしながら、料理を作っていく。 しばらくたつと、店に美味しそうな香りが広がった。 「おまちどうさま、茸のパスタ温野菜添え と カフェオレです」 パスタの上に 彩り鮮やかな野菜が並べられ、見た目も綺麗なランチの出来上がりだ。 「おいしそう、いただきます♪」 一口頬張ると、茸の良い香りが口いっぱいに広がる。 「そんな顔をして食べてもらえると、私も作りがいがありますよ」 それから、また世間話をしながら、食事を進める。 あらかた食べ終わった所で、マスターが話を切り出した。 「サファイアちゃん、ここ2~3日西の門近くにモンスターが出るそうなんだ。昨日きた旅のお客さんが、命からがら門に飛び込んだって話をしていったんだ」 その話を聞いたとたん、姫の表情が引き締まった。 手をあわせて、ごちそうさまをするとすぐ立ち上がる。 「サファイアちゃん、今から行くのかい?」 「ええ、早い方がいいわ。犠牲者が出る前に…。」 「じゃあ、おやつの時間位には終わるね。特大のパフェを用意して待ってるよ。」 「楽しみ~♪ じゃ マスターいってきます。」 軽く手を振ると店を後にする。 路地裏に回ると、ピアスから俺を呼びだした。 「マル男、西門近くまで一気にとんで。」 「わかった、行くぞ。」 魔方陣を作り、西門近くまで転位した。
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