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「そうなんだ…でもさ、送ってくれたりとかって、先輩意外と優しいんだね。冗談じゃ面倒臭くてそんな事しないんじゃないかな…?」
のりちゃんは優しく微笑むと、もう少し信じてみたら?と告げた。
信じる…かぁ…………
それが一番難しいんだけどねぇ…
「っていうかぁ…実害がない先輩よりも、手を出してきてる女どうにかしたほうが良くない?いつ香緒が怪我するか心配なんだけどぉ…」
春が頬を膨らませるとのりちゃんは神妙に頷いた。
「そうだよ…先輩に話てみたら?」
「そうそう、俺の女に手ぇ出した奴は許さねぇとかぁ、公言してもらったら~?」
「い、イヤよ!恥ずかしい!だいたい、まだ本格的に付き合ってるわけじゃないし…」
赤くなった顔を背けると、顔赤い~と、春に頬をつつかれた。
「でも、エスカレートする前にどうにかした方がいいよ」
のりちゃんの心配そうな声が聞こえると同時にチャイムが鳴った。
「あ、戻らなきゃ…香緒、また後でね」
春はのりちゃんの席から立ち上がるとパタパタと席へ戻っていった。代わりにのりちゃんが席へつく。
「はぁ…………」
地味に過ごしたくてここを選んだのに…
私の幸せ…戻ってこぉぉい…………
それから、数日。吉沢とは行きも帰りも一緒にいるわけだけど、会話が盛り上がるわけでもなく、一週間が過ぎようとしていた。睨まれて、オドオドしてっていう関係は代わっていない。
代わって来ているのは下駄箱トラップだ…
砂はまだ良かった。払えばいいから…ただ…
「ベタベタ…」
水はやめてくれないかしら…履けない事もないけど替えの靴下なんて持って来てないのよ…相手も様子見てるんだろうなぁ…吉沢にチクられたら大変だし…何も行動に起こさないからどんどんエスカレートした苛めに変更してきている。
『近ずくな ブス』こんな手紙も毎日入ってる。なんて低レベル…近づくな、よ。ず、じゃないわ…
こうなっても吉沢にこの事を言う気にはなれなかった。信じたいな、と思う自分がいるのも確かだけど、裏切られて「ほらみたことか」って状態になった事を考えると、全て頼ってしまって傷いた時にどうしていいか分からないから…
そんな事考えて俯いていたのがいけなかったのか、濡れた上履きは履かずに代わりを借りに行こうと歩き出した時、背中を強く押されて思わず前のめりに転んでしまった。
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