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「いたっ!」
思いきり転んで膝を押さえていると後ろから笑い声。
「ちょっと何あれダサァイ」
「良夫もこんなのに付きまとわれて可哀想~」
振り返ればそこには化粧バシバシでパンツ丸出しのロングヘアーの女とセミロングの髪型に同じような化粧をした女。
ダサイ事してんのはどっちよ…だいたい付きまとわれてるのはこっちよ!
ついつい泣きそうになってると―ピピッ―と携帯カメラの音。それから聞きなれた高い間延びした声。
「あ~、ムービー起動しちゃったぁ~香緒大丈夫~?誰かに押されたんだよねぇ~怪我してない?」
春が携帯を取り出して目の前の女二人をバッチリ撮っていた。それから「吉沢先輩に見せちゃおぅかなぁ~」
と呟きながら私の横にしゃがみこんだ。
すると目の前の二人は急に言葉を引っ込めて歩いて行ってしまった。
「ばっかじゃねぇの…?」
いつも聞きなれない春の低い声がして春を見ると去ってく二人を睨み付けていた。
「春…男の子みたい…」
ついついそんな事を言うと春はいつもの調子で頬をプクっと膨らせた。そんな春に小さく笑ってしまう。
「もぅ!心配してるのにぃ!香緒も香緒だよぉ…何もしないからああやって付け上がって手を出してくるんだからねぇ!ムービーでバッチリ撮ったし…これ先輩に見せたらぁ?」
春の言葉には感謝しつつ小さく首を振った。
「自分で言うから大丈夫…ありがとう春」
その言葉に春は不満そうな顔をした。
「明日はやっと休みだね。香緒ちゃんはどうするの?」
昼休み、一緒にごはんを食べていたのりちゃんの問いかけに思わずニヤけてしまった。
「なぁにぃ香緒…怖い~」
「失礼ね…明日は待ちに待ったイベントの日なのよ」
「イベント~?ライヴとかぁ?」
首を傾げる春に、そんなとこっと答えておいたけど、のりちゃんにはしっかり分かったみたい。
そう、あしたのイベントは地元のコミケの日。東京ほどではないけど、結構有名な漫画家も足を運んでるから外せないのよ!
「そっか~、S街でも開催されるんだね…いいなぁ…私も行きたいなぁ…」
「行こうよのりちゃん!」
「なぁ…ライヴって誰の?」
山田君の問いかけにどう答えるか、二人して一瞬固まってしまった。
「えっと…一部仮装パーティー…?」
「そう!好きなグッズがあったり…ね!」
「何それぇ~」
分かるまい…いや、分からなくてもいいのよ…
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