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「二人だけ分かるなんてずるぃ~」
春は足をバタバタさせながら講義してくるけど、うん。まだ二人に打ち明けるには早い気がするし…でも、春はコスプレしてっていえばしてくれそうかも…
「あぁ~、明日何着てこうかしら…」
ニヤニヤと考えこんでいると、携帯が音を立てた。着信音は『運命』
「え、香緒、何その着信音…」
「………………吉沢…先輩…」
「アハハ!香緒ナイスぅ~!」
運命が流れる時は吉沢からメールが来た時。
『明日暇か』
いいえ、暇ではありません。たった今、のりちゃんとコミケへ行く約束しましたから。
とも書けない…どうやって断ろうか…
ため息をついた私にのりちゃんは「吉沢先輩なんだって?」と問いかけてくる。
「明日暇かって…どうやって断ろう…」
「何で断るの?せっかく先輩が誘ってくれてるんだもん!コミケはまたあるし、先輩優先すべきだよ香緒ちゃん!」
急に勢いよく責められて驚いてしまった。
のりちゃんは吉沢絡みになるとやけに協力的なのよね…
「コミケ?」
山田君はピタッと箸を止めてのりちゃんの言葉に反応した。
「コミケって…誰かから聞いた事があるような…」
「あ~!ね!春野君も山田君も先輩優先するべきだって思うよね!」
のりちゃんは山田君がそれ以上考える前に強引に話を振った。
二人ともキョトンとしながら頷いている。
「……うぅ…でも…グッズ…」
「グッズなんて、私が何でも買ってきてあげるから!ほら、返事したほうがいいよ!」
くそぅ…何で吉沢の為にコミケ諦めなきゃいけないのよ…
私はシブシブ携帯の返信ボタンを押すと
『特に無いです。』と返した。
するとすぐに返事が来て、そこには『11時に学校の校門で待つ』の文。人の事言えないけど…色気のないメールだわ…
『分かりました』
そう返信して携帯を閉じる。
「先輩どこか行くってぇ?」
「さぁ…校門で待つとしか来なかったから…」
ため息混じりに答えると春はどこか楽しそうに「初デートだねぇ」と…
で…デート…?
これってデートなの?付き合ってないのに…?
私が思わず固まったのも無視して春は楽しそうに更に私に追い討ちをかける。
「やっぱり香緒もオシャレするのぉ?」
「オシャ…レ?」
「だってぇ、男の人と二人で出かけるなら最低限のマナーだしぃ?」
「…………このままじゃ…まずい?」
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