春一番、吹きまくる

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少しでも伸びないかとスカートの裾を引っ張っていると、春が戻って来た。 「ちょっと!ノックぐらいしなさいよ!」 「ごめぇん!てかぁ、香緒何やってんの~?」 ジュースを机に置きながら小首を傾げると春に 「ねぇスカート短くない?伸びないかなぁ…」 「短くないしぃ、伸ばしてどうするのぉ!」 駄目!と春に止められて唸るしかできない。 「見てよぉ!私のスカート何て香緒なんかよりずぅと短いしぃ~」 確かに、春のスカートは太ももの半分より上に裾がある…下がどうなってんのか気になるわ… 「さ、香緒ここに座って!」 肩を押されて案内されたのはバカでかい三面鏡の前。おとなしく座ると春は「よし!」と意気込んで最初に髪型を弄り始めた。 「あ~、香緒、超髪がうっとうしい…ちょっと切ってい?」 「ど~ぞ~」 ここまで来たらどうにでもしてくれって感じよ。 成されるがままになっていると、春は器用に髪をまいたりアップにしたり…なんでそんな器用に出来るのか不思議だわ…男の子なのに… 「後は~お化粧~」 春は私の前髪を右に軽く流してニコリと笑った。 後ろ髪は軽く巻いて、頭の右側でポニーテールにしてある。 「香緒は目に力入れたら良くなるかも~」 「はぁ…そうですか…」 なんだか…人に化粧されるって怖いのね…だって目にマスカラだのラインだのが近づいてくるんだもの…上向いたって下向いたって怖いわ! 時間は10時ちょっと前。春のミジンコからネコへ変身作戦は終わった。 「すごぉい…私のまつ毛が長い…しかも二重!」 「香緒はぁ目はそこそこ大きいけど一重でまつ毛短いから印象薄いんだよぉ?だからぁアイプチしたの~」 「春…どうしてそんな器用なの?」 「大袈裟よぉ香緒は…」 「だって私にはできないわ」 「それは香緒が普段からしてないからでしょ~」 「してても無理よ…さすが春って感じね…ありがとう」 そう言うと春は少し照れくさそうに笑った。
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