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時間になって、私は春から借りた黒のミニブーツを履き、短いスカートを気にしながら再び学校へと戻ってきた。
待ち合わせの時間まで後10分。まだ吉沢はいないみたい。
吉沢と…というのは置いておいても、やっぱり普段と違う格好をすると気分が楽しくなる。
「あ、来た」
私が来てから5分と経たずに吉沢がやってきた。時間前に来るなんて、結構律義な男ね…朝も遅れた事がないし…
近づいてきた吉沢は薄手のニットの黒いセーターにダメージジーンズとシンプルな出で立ち。ベルトは太くていかついし、靴も先がとがって柄がウロコっぽいのが怖さになんとなく拍車をかけていたけど、良く見ればモデルみたいな体系だし、カッコイイ。
やばい…緊張してきた……
吉沢は私の前までやってくると、何故かじっと凝視してきた。見つめて…と言えないのは、吉沢が思いきり眉をしかめて覗き込むから…
「せん…ぱい?」
無言の攻撃に耐えられなくなって話しかければ、吉沢はすっとんきょんな顔をして「やっぱり香緒か…」って…
その言葉の意味が分からず首を傾げれば吉沢は少し頬を赤くして
「いや、いつもとダイブ違うし…わからなかった…」
吉沢は小さな声で、似合うぞと告げると私の手を引いて歩き出した。
私はと言えば、吉沢のせいで真っ赤になってしまった顔を見られないように俯いて、繋がれた手にかいた手汗をどうしようかと悩む羽目になった。
「あの、先輩。今日はどこに?」
無言で歩き続ける吉沢に問いかければ、吉沢は「映画」と一言。
「見たい映画があるんですか?」
「いや…香緒が見たいのでいいし」
「私が見たいの…」
相手が吉沢でなければ某アニメの劇場版が見たい。
「…何がやってるか、見てから決めましょうか…」
「分かった」
「あの…先輩?」
「何」
「手…ずっと繋いでるんですか?」
「…あぁ?」
「いや…私緊張で手汗凄いんです…」
「緊張してんの?」
「そりゃぁ…」
「そうか」
いや、そうかじゃなくてさ…
「手…」
「面白いから駄目」
ふと振り返った吉沢が満足そうに笑っていて、ドキリと心臓が鳴った。普段逆三角の怖い顔してるくせに急にこんな顔をするなんて卑怯だわ…
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