春一番、吹きまくる

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映画館に着いて、上映作品を確認。 話題になった日本ホラーのハリウッド版と、サイコサスペンス物。あとは中国のアクション映画、子供向けアニメ(私がみたいのはこれ) 「先輩は、どんな映画が好きなんですか?」 「俺は何でも見る。だから香緒の好きなの選べよ」 「じゃぁ…これ…」 私が指さしたのはハリウッド版にリメイクされた日本ホラー。 チキンの私はストーリーが気にはなってたけど一人で見る勇気がないし…吉沢みたいな男なら私と一緒にびびったりしないだろうから頼れるわ。 「………」 「あれ……?先輩、もしかしてホラー苦手…」 「んなわけねぇだろ!」 題名を見て固まっていた吉沢に声をかければ怒鳴られてしまった。吉沢は私の手を引いて、チケット売り場へと歩き出す。怒鳴られたのに怖いなんて思うどころか思わず笑ってしまいそうになった。今の吉沢の顔は拗ねた子供みたいで… 「先輩、チケット代…」 チケット代を出そうとすると、吉沢は不機嫌そうに口を歪めた。 「いらねぇ。俺が誘ったんだし…」 「でも…」 「それ以上言うとここでその口ふさぐぞオイ…」 急に口がくっつきそうな距離に吉沢が顔を近づけて来て慌てて顔を離した。 ―び、ビックリしたっ… 「お…お言葉に甘えます…」 たぶん、ゆでダコくらい赤くなってるんだろうな…私の顔… オドオドしながらお金を引っ込めると吉沢は満足したようにレジにお金を置いた。 てか、こいつ…人前で何してんのよ…店員さん、ただでさえ見た目でびびってるのに、更に困った顔してんじゃないのよ… 吉沢は支払いを済ませると私の手を引いて売店へ向かった。 「何か飲む?」 「あ、じゃぁ私が…」 「塞ぐぞ」 「アイスティーでお願いしま~す…」 何よ!そう言えば私が黙ると思って…! でもコイツ…やりかねないから逆らえないわ… 「ホラ」 「ありがとう…ございます…?」 先輩は私にアイスティーを渡してくれたけど、右手には自分の分の飲み物、左手には甘い匂いのポッブコーン。
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