春一番、吹きまくる

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何を買いに来たかというと、吉沢へのお礼だ。 流石に今日1日全部出してもらったし、何も無しじゃ悪い気がする…それにからかった分の仕返しもこれでチャラにしてもらうわ。 私はピアス売り場を覗き込む。いろんな種類があって、よく分からない。吉沢の趣味も分からないけど、とりあえず似合いそうなピアスを独断で選ぶ。 あの白い頭には金色が似合う気がして、金色で小さめの細身なリングピアスを選んだ。それからシルバーでできた王冠型の台にトルコ石のような丸い小さな石のついたピアスを選んでレジへ。 プレゼント用にラッピングしてもらい、鞄へしまうと急いで吉沢の元へと戻った。 「何か買ったのか?」 「はい、すみません…急に…」 「いや、いいけど…」 「先輩、それも買うんですか?」 吉沢が手にしていたジーンズを見て顔をしかめていたから問いかけてみる。すると吉沢は「どうしような」と呟いた。 「それも先輩に似合いますよ」 「…お前は何でも似合うって…」 「でも、嘘じゃないですよ?」 「…お前が言う似合う服買ってると破産しそうだな…」 そう言って吉沢はジーンズをレジへと持っていった。 さっきからなんだかんだで似合うか聞いてきた服とか全部買ってる…似合うっていうとその気になって買っちゃうのかしら…一人で買い物すると店員の口車に乗せられて言われるまま買っちゃうタイプ? レジから戻って来た吉沢に、店の客引き用のマネキンがかぶっていたカラフルアフロを差し出してみた。 「先輩、絶対似合いますよ」 「…………あほ」 「あたっ」 吉沢は私からアフロを奪うと無造作にマネキンへ戻して、私のオデコに軽くデコピンを食らわせてきた。 流石にアフロは無理か… 「俺はもういいけど、香緒はなんか見るか?」 「いえ、特には…」 「よし、行くぞ」 「え?どこに…」 また吉沢に手を引かれて歩き出す。 私の質問には答えずに吉沢はデパートを後にした。右手には大量の紙袋。ホントよく買ったなぁとか思っていると、吉沢は駅の近くの公園へと入った。それから無言でベンチに座ったから私もベンチへ腰かける。
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