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凛明はまた驚いて、目を丸くした。そして、降りて行く男の人と、キャリーケースを交互に見る。
えー!? そんなにあっさり!? もう一回くらい聞いてくれても良いのにー!! 何あの人!! やっぱ東京の人は冷たいの!? どうしよー!! えーうー、もー!!
「あの!」
凛明の口調は思わず鋭くなった。
男の人はすぐに振り向く。
「やっぱり手伝ってくれませんか?」
また一瞬キョトンとする男の人。でもすぐに笑って、階段を登り始める。
「はい、畏まりました」
何なんだこの人!! わけがわからない。今、畏まりましたって言った!? 何か私、馬鹿にされてる!?
凛明は少し苛立ちを感じた。
そんなことはお構いなく男の人はキャリーケースを持ち上げると、一段一段階段を降りて行く。
その後を凛明もゆっくりついていく。
下まで降りると男の人は、振り返り、左右を指差しながら聞いてきた。
「どっち?」
男の人は笑っている。
「……南口です」
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