第一話 出逢

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瞳矢は電車を降りて、階段に向かって歩き出す。午前六時半を回ったばかりのホームは、まだ閑散としていた。 もうすぐ春だと言うのに、朝の風は冷たく、睡魔との戦いを邪魔する。 瞳矢は大きな欠伸をしながら、震えた携帯を取り出した。 『送信者:お父さん 件名:仕送り』 内容は見ずに携帯を閉じる。 返信は後で良い。今はとにかく早く帰って寝たい。 昼からバイトなのに、オールしてしまったことを今になって後悔するが、若気の至りとして納得することにした。納得したところで、睡魔は身体の中を蝕み続けている。 そんな瞳矢の目に入ったのは、階段付近で大きなキャリーケースを転がす女の子だった。 階段の前で困ったかのように立ち止まった。恐らく、どうやって自分の身長の半分はあるキャリーケースを下まで降ろすのか、考えているのだろう。 瞳矢はゆっくりと近付いて声を掛けた。 「良かったら、手伝おうか?」
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