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瞳矢はキャリーケースを運びながら、改札口を出た。そして、邪魔にならない柱の横に静かに降ろした。
「ありがとうございました」
女の子は頭を下げた。表情はやはり不機嫌そう。
「どういたしまして。家近いの? 一人で大丈夫?」
余計なお世話だとわかってる。だけど、聞かずにはいられなかった。
「いえ、彼氏が迎えに来ますから。今、向かってるそうです」
女の子は素っ気なく言う。
可愛い子には彼氏がいる法則はやはり崩れないな。でも、それなら大丈夫か。
「そっか、それは良かった」
瞳矢は笑って言うと、売店に向かって、缶のホットココアを二つ買う。
「はい、寒いから」
女の子には優しくします。例え彼氏がいても。別に下心があるわけじゃないけど、それが男だと思うから。
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