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「ここが新しい職場か…第二の人生が始まるな」
小汚ない二階建てのテナントの前に一組の男女が立っている。
「二十歳の人間が言う台詞じゃないわね…爺臭い」
一人は男。黒のロングコートを着込み、その下の服も黒。黒づくめでパッと見、その筋の方と見間違う。
もう一人は女。テンガロンハットをかぶり、白のワイシャツに革製のベスト。腰には二挺の拳銃を携帯している。一言で言えばカウガールだが、ジーンズ等のズボンは穿いておらず、スカートを身につけている。
「爺臭いってか…アニー、その毒舌なんとかしろや。客が来なくなる」
「貴方にだけよ。お客には笑顔で接するから大丈夫。ところでガルシア」
ガルシアと呼ばれた男が欠伸混じりに返答する。
「…なぁにぃ?」
「私もここに住むの?」
アニーが嫌そうな顔をしながら質問する。
「あぁ。その方が便利だろ?通勤時間三十秒だし」
「住居スペースには部屋一つしか無かったわよ」
「俺と同室でいいだろ?」
アニーの顔が嫌そうな顔から完璧に拒絶に変わる。
「部屋探してくるわ。夜に寝込み襲われたくないもの」
「…一人寝は寂しいから添い寝して欲しい」
「嫌よ。カタリナじゃないんだから……ごめんなさい」
ガルシアが一瞬顔をしかめるが、すぐに戻る。
「…構わねぇよ。部屋探すなら好きにしな。もうすぐ家具が届くから、行くなら早い方がいいだろ」
吐き捨てる様に言ったガルシアはテナントに入っていく。
「ま、待ってよ!」
アニーは機嫌を損ねたガルシアを追い、急いでテナントへ入っていった。
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