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「客来ねぇなぁ…」
机に突っ伏し不満を呟く。
何でも屋を開業してから一週間。客がまったく来ない。
「立地条件が悪いのよ。何で裏通りなんかに…大通りに面した場所もあったでしょ?」
「そういう所は高いから駄目だ。大体、大通りなんて治安良いから、仕事なんてギルドに持ってかれるぜ。その点裏通りは治安が悪い。その分一般人はあまり来ないが、見返りはでかい」
「でも依頼人来てないじゃない。給料出るのよね?」
…正直ヤバい。このままでは、アニーに給料を払うどころの話じゃない。
「聞いてるの?」
「あぁ。いよいよヤバくなったらアニーを風俗に売り飛ばす…いってぇ~!」
無言で持っていたマグカップを投げつけてきやがった。
あ、血が出てる!
「ガルシア…貴方、女をなんだと思ってるの?」
「人類の宝。男が命張って危険や戦闘から護るものって感じ」
「い、意外とまともね…」
それくらい当然だろ。女性は元々、荒事には向いてない。男とは筋肉の付き方が違うから。
「お前には俺がどう写ってたんだ?」
「…てっきり、物としか見てないと思ってた」
失礼極まりないな、名誉毀損だ。
「やれやれ、酷いな」
「だって発言が軽いんだもの。しょっちゅう、部屋に女の子連れ込んでたし」
総本部時代の話を持ち出すなよ…。相談に乗ってただけだっての。
まぁ、戴いちゃった事もあるけど…。
「うるせぇよ。あ~ぁ、どっかに可愛い女の子でも落ちてないかね~」
「それが軽いって言うのよ」
言い返そうとしたその時、事務所の扉が破砕され、何者かが転がり入ってきた。
「ど、ドアが!!てめぇどこのどいつだコラァ!!」
「た、助けてくれ!」
扉を破砕したのは埃まみれの男だった。全身傷だらけだが、命に別状は無い。
「てめぇの事なんざ知らねぇよ!ドア代弁償しやがれ!!」
「ガルシア!それは後にして!」
「後にできるか!今じゃなきゃ…うおぁ!」
倒れている男の胸ぐらを掴んでいたため、中腰になっていた…それが失敗だった。
「ってぇな!今度はなんだ?」
強烈な体当たりに床に転がる…と同時にのし掛かってくる影。
「動くな!」
「あ?ガキかよ…」
俺に馬乗りになっていたのは薄汚い子供だった。
「おいガキ、男ボロクソにしたの…てめぇか?」
「うるさい!お前もこいつみたいになりたいか!?」
うるせぇのはお前だよ…ったく。
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