14人が本棚に入れています
本棚に追加
子供の首を掴み、思い切りぶん投げる。お~、面白いくらい飛ぶな。
「アニー、壁に縫いつけちまえ」
アニーがホルスターから銃を抜き放ち、精密射撃。
リベットと呼ばれる鋲を打ち出す銃で殺傷能力は低い。
「さすがは銃の女神!凄いやアニー!」
「…まったく、子供になんてことを」
アニーの放ったリベットは子供の輪郭ギリギリを撃ち抜き、怪我一つ負ってない。文字通り壁に縫いつけたのだ。
「さて、これで少しは静かになったな。おいお前…どういうことか説明しな」
事の成り行きを見て逃げ出そうしていた男を呼び止める。
「お、俺が悪いんじゃないぞ!そのガキが俺の食い物盗むから…」
「なんだよ!元々盗んだ物だろ!!」
こいつら、もしかして…。
「お前ら、スラムの人間か…」
「なっ…ち、違うぞ!」
「そうだ!悪いか!?」
やっぱりな…まぁこれでドアの修理代は見込めない。
「うるせぇよ…怒鳴るなや。別にスラムの人間だろうが何だろうが、差別する気は無ぇ。とりあえず、詳しく話せ」
「この状況でか!」
縫いつけられた子供が、喚く。だからうるせぇって…。
「アニー、リベット抜いてやれ。ガキ、暴れんなよ」
「ごめんね。恐かったでしょ?動いちゃ駄目よ」
リベットを抜いていくアニーを眺めソファーに寝転がる。男の治療をしてやろうとも思ったが、命に別状無いし野郎の手当てなんかしたくない。
「まずは名前」
「…ラッドだ」
「ビンス」
男はラッドと名乗り、子供はビンスと名乗った。
「あっそ…この際お前らのこたぁどうでもいい、問題はドアだ。安物だが、スラムの人間にゃ払えねぇだろ?」
「た、確かに金はない。だが情報ならある」
ラッドが取り繕う。ビンスは関係無いといった感じで事務所内を見回している。盗む物でも物色してんのか?
「ビンス君、何か飲む?ミルクくらいしか無いけど」
「…う、うん」
どうやら、違うらしいな。ビンスの奴アニーに話しかけられて照れてやがる。可愛いもんだ。
「情報ってどんなのだ?」
ビンスはアニーに任せて大丈夫だろう。異常に子供好きだし。
「色々だ。そこら辺の噂話からヤバいのまでな」
「俺の役に立ちそうな情報はあるか?場合によっちゃそれでもいいぜ」
ラッドが記憶の引き出しで情報を探していると、アニーがミルクを持ってきた。
「はい。ホットミルクにしたから火傷しないようにね」
「ありがと…」
最初のコメントを投稿しよう!